東京地方裁判所 平成2年(ワ)14203号 決定 1997年7月22日
決定
右事件における当裁判所が平成九年三月一九日にした文書提出命令(抗告審によって一部変更されたもの)によって提出された文書(以下「本件文書」という。)中に含まれる営業秘密が不必要に開示されることを避けるために、本件文書の閲覧、謄写等の方法について、裁判所の訴訟指揮権に基づき、次のとおり決定する。
主文
一1 本件文書の閲覧は、原告訴訟代理人に限り、通常の訴訟記録閲覧の手続に準ずる手続により認める。輔佐人は、原告訴訟代理人と同時に閲覧する場合に限り閲覧することができる。
2 原告訴訟代理人が本件文書を閲覧する際には、補助者として、各閲覧の日毎に、予めその住所、氏名、その職業、雇用者を届け出た原告訴訟代理人又は輔佐人の常時雇用する者、原告訴訟代理人の委任した原告の従業員でない公認会計士又はその常時雇用する者に限り立ち合い、補助することができる。
3 原告訴訟代理人は、本件文書の記載内容を理解し、又は本件訴訟の争点との関連性の有無等を知る上で必要があると認めるときは、予め特定して、その氏名、役職を届け出て、閲覧場所外で待機している原告の従業員二名(技術担当者及び経理担当者各一名)の内一名を閲覧場所に入室させ、本件文書の必要部分を示して、その意見を聞くことができる。
4 本件文書の閲覧は、当部書記官の指定した場所で、指定した日時に行う。
5 原告訴訟代理人、輔佐人は、本件文書の閲覧に際し、メモ(一文字ずつ手で入力する電子的記録を含む。以下同じ。)をとることができる。
2項の補助者は、原告訴訟代理人のためにメモをとることができる。
原告訴訟代理人、輔佐人、2項の補助者は、右メモを原告代表者、原告の役員、従業員その他原告の指揮監督を受ける立場にある者及び第三者に示したり、メモの写しを交付したり、メモの内容を伝達してはならない。
6 原告訴訟代理人、輔佐人、2項の補助者は、謄写の際の便宜、原本提示の際の便宜のため、本件文書を損傷することなく、取り外し可能な付箋(ポストイットなど)を、本件文書に貼付することができる。
7 本件文書の部分を示された3項の原告従業員は、示された本件文書の記載事項を、その場であると、後刻、後日であるとを問わず、また、文書であると、音声、電子的記録その他の方法であるとを問わず、記録してはならず、原告代表者、原告の役員、従業員その他原告の指揮監督を受ける立場にある者及び第三者に伝達してはならない。
二1 原告訴訟代理人は、財団法人司法協会に委任して、通常の訴訟記録謄写の手続に準ずる手続により、本件文書中で本件の立証に必要な記載があると思料するページについて、ページ単位で謄写をすることができる。
2 原告訴訟代理人は、右謄写によって得た写し又は右写しの写しを原告代表者、原告の役員、従業員その他原告の指揮監督を受ける立場にある者及び第三者に交付してはならない。
3 原告訴訟代理人は、右謄写によって得た写し又は右写しの写しを、その記載内容の理解、本件訴訟の争点との関連性の有無の判断、計数整理のため、その常時雇用する者、輔佐人及びその常時雇用する者、又は原告訴訟代理人の委任する公認会計士及びその常時雇用する者に示すことができる。
右示された者は、その内容を原告代表者、原告の役員及び従業員その他原告の指揮監督を受ける立場にある者並びに第三者に伝達してはならない。
三1 原告訴訟代理人は、本件文書の閲覧及び謄写によって得た資料に基づいて、立証しようとする被告白鳥製薬株式会社及び被告ソルベイ製薬株式会社に対して請求する損害賠償金及び算定の根拠となる数額を具体的に主張する(請求が他の会社との共同不法行為を理由とする場合には、本件文書によって立証すべき事項とそうでない事項とを区別して主張すること)。
2 被告白鳥製薬株式会社又は被告ソルベイ製薬株式会社が本件文書の記載から認定できる損害賠償金算定の根拠となる数額(内訳を含む。)を全て認めた場合は、原告訴訟代理人は、その被告の提出した本件文書を書証として提出しないものとする。
四1 原告訴訟代理人は、三2の場合を除き、右謄写によって得た写しのうち、本件の立証に必要な記載のあるページに限り、ページ単位で書証として提出することができる。
2 原告訴訟代理人は、予め書証として提出予定の本件文書の部分の写しを被告訴訟代理人に交付する。各被告は、原告訴訟代理人が証拠として提出するのであれば、本件文書による証明事項に関連のない部分として秘匿を希望する部分をマスク又は黒塗りした本件文書の写しを、右交付を受けた日から二週間以内に原告訴訟代理人に交付する。但し、裁判所は、各被告の具体的理由を付した申し出により、右期間を延長することがある。
3 原告訴訟代理人は、前項により秘匿を求める各被告の希望を尊重するものとするが、各被告の希望する箇所をそのまま秘匿すると被告らの争う事項を証明できないと思料する場合は、その旨文書により主張して、秘匿のない本件文書のページを書証とすることができる。
4 原告訴訟代理人は、書証として提出した本件文書の部分の写し(被告が右2によりマスク又は黒塗りした本件文書の写しを原告訴訟代理人に交付した場合は、右3によって秘匿のないページを書証としたときを除き、その秘匿した状態で)を本件訴訟遂行上必要な範囲の原告の役員、従業員に提示、交付することができる。
5 原告訴訟代理人は、謄写によって得た本件文書の部分の写しのうち、本件訴訟の終了までに書証として提出しなかったものは、その責任において、記載内容を認識できない状態にして破棄する。
(裁判長裁判官西田美昭 裁判官八木貴美子 裁判官沖中康人)